夏に比べて仕事はだいぶ落ち着いてきた。
状況はあまり変わっていない気もするが、少なくとも業務量は減って、夜中や早朝にまで仕事をしなくてもよくなった。
途中で休職したチームメンバーは未だ帰ってこず、その分の補充はなく、実質一人回しなことは変わりないが、その点はもう期待してはいけない、ということはさすがにわかっている。
一人でやれる分をきっちりとやり、ひたすら持ちこたえてやっていく以外にはない。
ふと、入社当初の自分は一体何に困っていたんだっけと思い出してみたら、「情報が自分のところまで回ってこないことがあること」で、色んな意味で懐かしく思ってしまった。
当時は日本に技術が複数名いて、顧客のいるサイトの営業からの情報が、チームリーダーや技術リーダー、またはチーム内の一部のメンバーまでにしか届かないことがままあり、最末端で実際に実験を打ちデータを出す人間として、難しさを感じることがあった。
でも、数年後には、あれはとても贅沢な悩みだったんだなあと実感することになった。
あの後、あれだけ人数がいたチームメンバーは全員いなくなって、その仕事は結局私一人で引き継ぐことになったし、今やっている別の仕事でも、技術は私一人しかいない。そのため、「情報が来ない」ことで困るなんていうことは、今は起こり得ない。
昔は、仕事で何か悪いニュースがあると、会社帰りに同じチームの技術数名で飲みに行って、ビールを飲みながら、残念だったーと言い合ったり反省会したり、時には単に愚痴ったりして気持ちの区切りをつけていた。
今は、もはや愚痴る相手すらいないので、口から愚痴も出てこない。
そして、仕事で失敗したときに一緒に残念会をするチームメンバーがいないということは、成功したときに一緒に祝杯をあげるチームメンバーがいないということでもある。
海の向こうの違うサイトの人達が盛り上がっているのをメールや電話会議で眺めつつ、「あー、よかったね。よかったよかった」と一人で思って、返信やコメントはするけど、ほんとうにそれだけ。
私だけでなく、他の人も全員がそのような状況でそれぞれの仕事を回しており、みんなほんとうにタフだなあと思う。
休職中の人のことは、全く他人事とは思えない。私も24歳で入社して、おそらくトータル50年以上は働くことになるのだろうと思うけれど、それだけ長期間働いていたら、休むしかない時期は、その間二度や三度じゃなくやって来るだろうなと思う。